V部 1.情けは人のためならず


1.情けは人のためならず

 まあ、そういうふうなことでですね、私は何も、自分で考えたこと何にもない。
向こうの世界からただ信号来る。それを、信号を素直に受けとめるだけ。そうし
ますと素晴らしいものができる。それ以外にですね、ほんとにありえない事が次
から次ぎ起こる。私は今でも・・・、七十五才ですけど・・・、今、岡山の林原社長
のお世話によってちゃんと、あのね、私、毎朝会社行っております。私の部屋、
私だけの部屋を作ってもらっております。思う時間にいらっしゃいということ。

 会社は朝、あの、出勤遅いんです。朝は、朝ちょうど九時に始まって終わりが
五時半まで。私はそれを変えて、七時半、七時十五分には行きます。十五分に
行って、そして夕方お食事に家へ帰って一時間おってまた、会社へ来て・・・、
会社にだいたい九時半から十時までおります。結局、自分の家でのんきに遊ん
でたり、テレビ見てては向こうの信号はやってきません。向こうの信号、来る信
号というのは決してテレビ見て遊んでると一切来ないんです。やっぱり自分の
実験室、研究室に居る。何も別にやっていないんです。ただ居るだけで信号来
るんです。

 だからこの世の中そういう事が来るのはですね、遊んでおってはいけないわ
けね。だから、何も仕事はしないけど七時半から会社へ出て晩遅くまでおる。向
こうの世界からいろんな信号送ってくれるわけですね。それを作るだけ。この世
の中ってのはねえ、まず私のように若いときには普通の人の十倍ぐらいな勉強
をする。そして、自分の為やなしに・・・。結局そういうことをする原因も自分じゃ
ないんです。友達がいっぱいおる。他の学科におる。それがみな研究してる。
研究室へ遊びにいくと私が、「そんなことしてたら、そんな研究完成するまで三
年も五年もかかるよ」「そんなことしないで私の方法にしなさい。すぐできるよ」と
言う。そしたら向こうが、「ほな、一緒にやってくれ」と言う。一緒にやってくれと
言われたらやっぱりそれが分からないとできないから、その学科の勉強しなくて
はいけない。

 そういうことによって、自分の為やなしで、お友達の為の研究をやったのが結
局自分になったわけ。その頃、皆言うてました。「なんであんたみたいにあっち
こっちのことをやってあげるんだ」「大学の人いうたら自分の研究だけしたらいい
のに・・・」と言われた。「私はしようと思わないけど、やってほしい言われるから
やってるんだ」と言うておった。私も、「なんでこんなことせないかんのか?」と思
っておりました。ところが、定年で辞めて林原へ行った。発明が一週間に一個
平均できる。「あー、このことだなー」と思ったね。

 若いときに自分の遊ぶ時間を全部放ってしまって友達のために尽くした。“情
けは人のためならず”は、「あれは、これだなー」と思いましたですわね。だか
ら、若いときというのは自分の勉強も大いにしなくてはいけないけども、自分以
外に、周辺の自分のお友達の為にうんとやっておくこと。


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